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「茨の刻印」・35 |
どれ位の時が過ぎただろうか。窓から差し込む光は既になく、辺りは真っ暗になっている。
首に嵌められた封環が実際よりも重苦しく感じる。
茨の刻印が宿る額が圧迫されているようだ。
暗いな。
室内は明かりすら点けられずラクエルが去って以来誰も訪れていない。
静かだな…静か過ぎて何だか、嫌だ…。
静寂は…暗闇は…私に孤独を感じさせる。
今は、気がつけば当り前の様に側に居たフォレストが居ない。
勿論フォレストの事は信じている。
けれど…離れ離れになってしまった事が心を不安にさせているのも事実だ。以前より強く孤独感を覚える。
……フォレストの声だけでも聞きたい…。
そう思いながら両膝を抱えるように座り、膝頭に頭を置いた時、扉が開く音がして姫はハッと顔を上げた。
嫌な空気が入り込んでくる。
「ティナローザ様、ご機嫌麗しゅう」
右手に蝋燭を持って現れたのは痩せ気味の片眼鏡をかけた中年の男。
蝋燭の明かりで照らし出された顔は姫の良く見知っている顔で。
彼は姫に嫌悪を感じさせる笑みを浮べて見せた。
「ルヴォラム…」
何がご機嫌麗しゅうだ。寧ろ最悪だ。
「ティナローザ様。おいたはいけませんなあ。謀反を企むなど」
ルヴォラムは敢えて姫とは呼ばず、ティナローザと名前で呼ぶ。
「ふざけるなっ!! 私は謀反など企んでおらぬ!」
怒り心頭に達し、姫は渾身の力を込めてルヴォラムを睨み据える。
殺気すら篭っていそうな強すぎる視線に、一瞬ルヴォラムは気後れし固唾を飲んだ。
「おお、怖い怖い。事実など幾らでもでっち上げられる。ティナローザ様には謀反人として失脚して戴きますよ」
ルヴォラムは穏かで残忍な笑みを姫に向ける。
「…貴殿の仕業か? 私が謀反を企んでいると吹聴したのは」
「期待に添えなくて残念ですが、噂を広めたのは私ではありません。私はそれに便乗しただけの事」
ルヴォラムはずっと以前から機会を伺っていたのだ。
自分こそが王になるべきなのだと、我が娘こそ王女にふさわしいのだと。
いつかあの玉座に腰を降ろす事を誓って。ずっと…ずっと王の隣で機会を伺っていた。
そして今回の謀反騒ぎ。
期は熟し、行動に移す時が向うからやってきてくれた。これを運命と言わず何というのか。
「こうなる事は必然だったのですよ。ティナローザ様」
「何?」
「明日、神殿でまたお会いしましょう。実に待ち遠しいですな」
慇懃無礼にお辞儀をするとルヴォラムは部屋を後にした。
「なっ、ちょっと待て!」
狼狽する姫の言葉を遮るように扉は重い音を響かせて閉まる。
神殿は罪人の真偽を決める場所でもある。
きっとルヴォラムはある事ない事を事実のように証言し、私を陥れるつもりなのだろう。
…父様の見ている前で……。
濡れ衣を着せられて、フォレストに会う事も叶わぬまま…終わってしまうのだろうか。
「くそっ!」
姫は乱暴に自らの頭を抱え込んだ。
他に幾らでも方法があるなら何でもやる。
しかし今はどうだ。罪人の檻に閉じ込められ、魔力を封じられ。一体何が出来ると?
何故自分はこうも無力なのだろう。
幾ら魔力が並外れていても。王族という地位があろうと。
「ただの、ちっぽけな人間だ……」
――力なく口をついて出た言葉には気怠さが混じっていた。
翌日。
神殿には朝から城中の人間が押し寄せていた。立ち見の者達までいる始末。
謀反人であるイルアーナ第二王女が取調べを受けるのだから無理も無いが。
白亜の壁や柱には蔦のような模様が所々に掘り込まれ芸術品としての価値さえ感じさせるほどである。それが更に神殿としての神聖さを増し、辺りは緊迫した空気に包み込まれている。
その席には、王は勿論、大臣のルヴォラム、騎士団長ラクエルもいた。そしてそれに連なる高官達が肩を並べる。更に室内、外全ての出入り口に警備兵達が配置されている。
しかし、対照的に採光の為の窓からは優しい日差しが差し込んでいた。
辺りに一際大きなどよめきが沸き起こる。
魔力の檻…通称<氷の棺>と呼ばれる死刑執行前の罪人を閉じ込めておくそれが姿を現したのだった。檻は移動もスムーズに出来る便利さも兼ね備えていた。
氷の棺に閉じ込められているのは他でもないイルアーナ第二王女ティナローザだ。
が、その顔には疲労が見て取れた。
ルヴォラムめ…!
姫は心の中で毒づく。
皆が好奇の眼差しを向けてくるがそんな事はどうでも良かった。
私は何て愚かなんだ…まさかこの封環が魔力を奪っていく種類の物だったなんて……。
おまけに星読も取り上げられてしまったし。
立っているので精一杯…いつまで持つか…。
魔力を奪われるという事がこれほど体に負担がかかるものだったとは。時々目が霞む……。
自分の非力さと愚かさが悔しくて、姫はルヴォラムを睨み据えた。
ルヴォラムは姫の視線に気付くと勝ち誇った笑みを一瞬浮べた。
程なくして、イルアーナ神殿の最高権力者である枢機卿によって取調べが始った。
「イルアーナ第二王女ティナローザ。エルディア神の名において真実を答えなさい」
中年を過ぎて初老に入ろうかという枢機卿は至極穏かな声で言い放った。
「は…はい」
一瞬言葉に詰まったのは上手く声が出せなかったからだ。自分では普通に声を出したつもりだったが思ったより、魔力を奪われているのが体に堪えているらしい。
話すのにも一苦労だな…。
姫は堪った疲労感を吐き出すように短くため息をつく。
「貴方は陛下を亡き者にしようとしたとありますが、これに相違ありませんか?」
「私は…謀反など企んでいない! そもそも動機が無い。次の王位継承者である私がなぜわざわざ謀反を起こす必要がある。陛下は私の最も尊敬する方であり…かけがえの無い父だ」
くそ。話せば話すだけ疲労感が増してくるようだ…。頭がガンガンする。
少し具合が悪そうな愛娘の姿を見て王は心底心配そうに、我が子の名を呟く。
今暫くの辛抱だぞ、ティナローザ。
すると王の隣に座していた大臣ルヴォラムがこう言った。
「謀反を企んでいないですと? では何故城に戻られた時お逃げになったのですかな? 一度ばかりか二度迄も。心にやましい事が無ければ逃げる必要は無いと思うが?」
ルヴォラムは弱者をいたぶる様な視線を姫に向ける。心の中ではさぞ愉快とばかりに笑っているのだろう。
「それは……っ」
と、続きを言おうとして姫は口を噤む。
捕まったら命の保証が無く無実を証明出来なくなる恐れがあったから。
だが、今更そんな事言っても誰も信じてくれないだろう。
ラクエルでさえルヴォラムに従っているではないか……。
「言えないのですか? まあ無理も無い。謀反を企てていたとしか言えないのでしょうからな」
そう言ってルヴォラムは勝ち誇った笑みを浮べる。
「違う! ……っ…」
一際大きく叫んで、姫はその場にしゃがみ込む。
封環の所為で…。魔力が殆ど残っていない。頭がくらくらする。立っていられない。
全身を襲う疲労感に姫はか細いため息を吐いた。
「皆さんご覧になりましたか? 姫のあの様子を。彼女の首にかかっているアレは魔力を封じる為の封環なのです。封環は本来魔族の力を封じる為の物。これといって人体に害は無い物のはずなのですが……」
ルヴォラムの言葉にその場に居た誰もが、苦しそうな姫に好奇の眼差しを向ける。
「今のあの姫の様子を見てお解りかと思います。そう……彼女もまた魔族の血を引いている」
その一言に神殿内が一気に騒がしくなる。
(そんな馬鹿な!)
(しかし封環で明らかに消耗しているのは事実だ)
(やはり並外れた魔力を持っていたのは、魔族だったからか!?)
その場にいた者達の様々な思いが交錯する。
ともあれ、一国の王女が実は魔族だったとなればたちまち世界中に噂が広がるだろう。
「ち…違……」
姫は精一杯否定しようとするが、どうしても力が入らない。
ルヴォラムめ! …何故私をそこまで貶めようとする?
「更にこの娘は『螺旋宮』へ加入し自ら自由に動き回れるようにし、外部から陛下の暗殺を企てていたのです!」
「ルヴォラムよ、しかし余には姫にそんな事が出来るとは思えぬのだが…」
王は良く通る落ち着いた声でルヴォラムに告げる。
「陛下、愛娘をかばいたいお気持ちは察しますれど、ここに動かぬ証拠がございます…」
そう言いながらルヴォラムは、姫から取り上げた『星読』を差し出す。
腕輪の形状のままの『星読』は布をしいた盆の上に置かれていた。
「そう。これは魔狩人にのみ所持する事が許される魔具…これは数日前陛下の寝所で拾ったものですぞ」
「なに!?」
ルヴォラムの言葉に王は流石に驚きを隠せない。
観衆達も再びざわつき始めた。
「陛下の寝所を護衛していたラクエルが拾ったのです。そうだな? ラクエル」
「はい。辺りに異常が無いか見回っていた所、陛下の寝所に忍び込んでいた輩が居たのです。私が寝所に入った時、まさに陛下の心臓を突き刺そうとする所でした。私は陛下をお守りする為、咄嗟にその場にあった燭台を投げたのです。慌てた賊は武器を落としそのまま逃げ去りましたが」
違う! 違う! 違う! 違う!
それは私じゃない。そんな事できるわけが無い。
ラクエルまでこんな出鱈目を言うなんて……。
姫は悔しさの余り握り拳を作った。しかし感情とは裏腹に力が込められない。
「第二王女ティナローザ。この二人の証言に不服があるなら言ってみなさい」
枢機卿が姫に問うた。
「……」
姫は懸命に口を動かすが、最早、声は音となって響かなかった。
どんなに心の中で、違うと叫んでもそれは誰の耳にも届かない。
かといって、身振りで説明するには体力を消耗しすぎている。立ち上がることさえままならぬ。
加速していく頭痛。重くのしかかる疲労感。周囲の冷たい視線。
以前感じた孤独感が再び蘇る。
誰も…誰も私の事を解ってくれない!
悔しすぎて涙さえ出てこない。涙でも流れれば違うという意思表示が出来るのに。
「沈黙は肯定と受け取りますが、異存はないですか?」
「……」
違う! 声が出せないのだ! 誰がこんな理不尽な事受け入れるか!! 何故解らない!?
首を振る事さえままならない。体が思うように動かせない。
八つ当たりした所でどうにもならない事は解っていたが、どうしても心の中でだけでも叫ばなければ気が済まなかった。
姫の悲痛な面持ちに誰もが罪を認めたのだと…思い違いをした。
「エルディア神の名に於いて、第二王女ティナローザを有罪と認めます」
枢機卿の下した決断にルヴォラムは口元を奇妙に歪めて笑みを浮べた。
くくく…ついに、ついにやったぞ!
ティナローザを失脚させてやったわ!
こみ上げる笑いを堪えるのすら必死で、ルヴォラムの肩が小刻みに揺れる。
「謀反を働いたその罪は海よりも深く、その命をもって贖うものとします」
その命をもって……私に死ねと言うのか――。
無実の罪を着せられて。
何故こんな理不尽が通ってしまうのだろう。こんなの間違っている。
このまま大人しく死を待つしかないというのか?
一目で良いからフォレストに会いたい。声を聞きたい。
会えずに死ぬのは、 ――怖い。
と、その時室内に強風が吹き込んできた。目も眩むほどの強烈な光と共に室内を吹き荒れた風が漸く収まると、そこに二人の人物が立っていた。
「その判決、ちょーっと待った方がいいんじゃない?」
「さもなくば枢機卿として不覚の事態を招きますよ」
一人は飄々とした男の声。もう一人は、姫が良く聞き知っていた声だった。
その時、その場に居た全員が言葉を失った。
その圧倒的な存在感でもって皆が圧倒されている。
そこに居たのは、『稀代の魔術師』と『蒼の賢者』だったのだ。そして賢者の足元には真っ白な猫が擦り寄っている。
そして…一番、我が目を疑ったのは他ならぬ姫であった。
来て、くれたのだな――。
少し距離があるのと、目が霞むのとでその姿ははっきりと捉えられない。
けれど姫は妙に安堵感を得ていた。
フォレストがここにいるということ。声が聞こえるということ。
それだけで、十分だった。
フォレストは<氷の棺>に捕らえられている姫に向かって歩き出した。
彼が進むにつれて、その場を埋めていた人々が波が引くように道を開けていく。
そして、フォレストは<氷の棺>の前に跪くと恭しく頭を垂れ姫に言った。
「姫。遅くなって申し訳ありません」
「……ぁ…」
良いんだ、フォレスト。と言おうとしてやはり姫は言葉に詰まる。
フォレストが呪文を唱えるとあっさりと棺の鍵は開いた。同時に棺そのものが消失する。
役目を終えた為、魔力で作られた檻が魔力そのものとなり宙に溶け込んでいったのだ。
フォレストは姫を大切に抱きかかえる。
かなり消耗している姫はそのまま力なくフォレストに凭れ掛かる。
「姫に味わわせた苦痛を貴方も味わうといい…」
フォレストは姫の封環を、外そうとするのを妨げる為の結界ごと自らの魔力でもって破壊し強引に取り除くと、ルヴォラムの喉元目掛けて素早く投げつけた。
封環はすんなりとルヴォラムの首にはまった。
「枢機卿。姫は謀反など企んでいません。それはずっと彼女と同伴していた私が一番良く解っています。それでも、どうしても姫を裁きたいとおっしゃるなら、先にルヴォラム様を裁いてからでも遅くはありますまい?」
シロちゃん。という掛け声に反応して、羽猫のシロちゃんが神殿内に紙切れをばら撒く。
紙吹雪のようにひらひらと舞い落ちていく。
当然、枢機卿の所へも。
そして、その紙面を見て枢機卿の表情が険しくなる。
「これは…麻薬売買に関する書類です。 ……下の方に記してあるサインは……」
枢機卿はルヴォラムを真っ直ぐ見据えて言った。
「ルヴォラム・ジェノラット。貴方です」
その瞬間、ルヴォラムの表情が凍りつく。 が。
「う、嘘だ。そんなもの幾らでもでっち上げられるではないか! 私がサインしたという確かな証拠があるわけではあるまい!」
しらを切り通そうとするルヴォラムを冷めた眼差しで見やりながら、オルファードが言う。
「じゃあ、あの人達の事はどう説明つけるつもり?」
オルファードが指差した後方に目を向けると、ルヴォラムが良く見知っている者達の姿があった。
イルアーナとは異なる色素を持つ者達。しかし、その身なりは必要最低限の物で。
「貴方の屋敷の地下に鎖に繋がれて閉じ込められていたよ。助けに行った僕まで怖がられるとは思わなかったけどね」
オルファードは余裕面でそう言った。
「知らぬ! 知らぬ! そのような下賎の者達など、この私が相手にするわけがないであろう!」
「酷い言われようだね。ほら、君達も言われっぱなしでいいの? 今までの不満をぶつけていいんだよ」
オルファードの一言に、その場にいた者達…ルヴォラムによって買い取られた奴隷達…は口々に己の怒りを叫んだ。
「私は身寄りが無いというだけで闇市に連れ去られ、そこの男に買われ、毎日鞭打たれていた!」
私も! 俺も! と彼らは堰を切ったようにルヴォラムによって与えられた侮辱と苦痛の日々の出来事を言い放つ。
「ええい! 黙れ黙れ! たかが奴隷風情が主である私を愚弄するか!」
ルヴォラムは思わずそう叫んでいた。
はっとして口元を覆ったが後の祭り。本性がばれてしまった。
「おやおや、大変だねぇ。大臣殿」
「オルファード。貴様、裏切るのか!」
「寝言は寝てから言って欲しいね。言ったはずだよ。僕は僕の真実の為に動くと。魔術師ってのは何時いかなる時でも冷静さを欠いてはダメなんだよ」
そこまではまあ、良かったのだが。
次の瞬間、その場にいた全員があっけにとられるような一言をオルファードは吐いた。
「それに僕、あんたの事嫌いだしね? 悪い子は所詮裁かれる運命なんだよ。観念することだね」
そう言ってオルファードは鮮やかに笑って見せた。
一方フォレストは疲れきっている姫を優しく抱きしめていた。
「あなたが無事で本当に良かった…他に酷い事とかされてませんか?」
フォレストは姫の体に堪えないように優しく問いかける。
姫の瞳が大丈夫だと言い返す。
「良かった…今のままでは話すことも辛いでしょうから、少しだけ魔力を分けてあげますね」
フォレストは姫の手と自分の手を重ね合わせ、意識を集中させる。すぐにフォレストの手が淡い光…魔力の結晶に包まれ、軽く熱を帯びる。
姫はぼうっとしながらその様子を眺めている。
綺麗な淡い魔力の篭った光が、自分の掌に染み込むように、掌で解ける雪のように溶け込んでくる。
とても温かくて、不思議な感覚。流れ込んでくるそれが、とても気持ち良くて安心する。
頭痛と気怠さが少し引いた気がする。
「ありがとう…」
他にもまだ言いたい事があるのに、今はそれだけ言うのが精一杯だった。
側にフォレストがいるという事がとても嬉しかった。
万人が信じてくれなくても、フォレストだけは私の事を信じてくれる。
その姿を声を耳にするだけでとても…とても安心する。
こんな時に不謹慎だと思うけれど。
――私は、こんなにもフォレストのことが好きだったんだな……。
そんな姫の思考を止めたのは布が引き裂かれる音。
音のした方へ素早く視線を巡らせると、ルヴォラムがもがき苦しんでいた。
「ぐああっ! くっ苦しい! 押しつぶされそうだあぁ〜!!」
耐え切れず胸元を掻きむしった所為でボタンが弾け飛び素肌が露わになる。
皮膚が不自然にボコボコと波打ち、皆の見ている前で異形の姿へと変化していく。
「はあはあっ」
肩を激しく上下させ、一先ず落ちいついたルヴォラムは元の姿より一回り大きく全身が漆黒に染まり、双眸は不気味に赤く光っていた。
それは誰が何処から見ても「魔物」でしかなかった。
ルヴォラムの首に納まっていた封環は、姫の莫大な魔力を吸い続けていたのと、 ルヴォラムの魔力を吸った事で飽和量を超え、今まさにひび割れようとしている。
「うそ…あの化け物がお父様…!?」
ルヴォラムが振り向いた先には娘のアリーシャの姿があった。
「アリーシャ」
「違う…こんなの…こんなの、私のお父様じゃない…っ」
アリーシャは過ぎた恐怖と驚愕で意識を手放す。
重力に逆らわず床に沈んでいく。
そして、彼女が床に倒れ伏したと同時に、封環も粉々に砕け散った。