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「茨の刻印」・序 |
――――――――茨の刻印
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それは、ある日何の前触れもなく、突然に現れる。
そして、王国第17代目の王女、ティナローザに、その稀有な徴が現れたのだった。
「フォレスト…」
姫は困惑の色を菫色の瞳に浮かべて目の前の青年の名を呼んだ。
「いかがいたしました?姫」
フォレストと呼ばれた青年は微笑んで聞き返す。
青みがかった光沢のある品の良い上衣とその下から銀色の長衣をさらりと着こなしている。
銀色の髪と青い双眸が青年の整った顔を必要以上に美しく見せている。
外見だけなら一国の王族とも引けをとらないであろう美貌だ。
「貴殿が腰掛けているのは…私の席なのだが…」
ここは姫の個室であり、部屋の主は他でもない姫なのだ。品の良い、しかし必要以上に豪奢ではない
調度品の数々は手入れが行き届き、現在も埃一つかぶっていない。
白亜を貴重にした落ち着いた部屋である。
「ああ、これは失礼致しました。姫も座りたかったのですね」
青年、フォレストは少しも悪びれた様子もなくあっけらかんと言い放つ。
「どうぞ、いらっしゃい」
そう言って両手を姫に広げたのである。
「いや、あの…?」
姫には全く訳がわからない。フォレストは一体何をどうしたいのか。
「私の膝の上へどうぞv」
満面の笑みで、外見からはおおよそ予想できない言葉を、彼は紡いだ。
姫は思わず絶句し、身じろいだ。
膝辺りまで伸びた、美しく青紫がかった癖のないまっすぐな髪が大きく波打った。
姫は暫く沈黙した後、一言。
「き、急用を思い出したので、出かけてくる!」
言うが早いか踵を返し扉の方へ向かう。
「それは残念です」
少しも残念そうでなく、笑みを浮かべるフォレスト。姫がその表情を見ていたなら悪魔の笑みに見えたことであろう。
パタン、と扉のしまる音がした。
部屋に一人残されたフォレストは楽しそうに一言つぶやいた。
「茨の刻印を持つ者とはいえ、17歳の少女にはちがいない。可愛いものだ」
新しい玩具を得た子供のように彼の瞳には嬉々とした色が浮かんでいた。